和田 良子(わだ りょうこ)
ベトナム中部の街ホイアンを拠点にオーガニックコスメを製造・販売する和田良子さん。幼少期のアトピーをきっかけに始めたブランド「タラン/taran.」は、初の訪越から7年を経て、今や在住外国人はもとより多くのベトナム人ファンも持つ人気ブランドとなった。
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ベトナム中部の街ホイアンを拠点にオーガニックコスメを製造・販売する和田良子さん。幼少期のアトピーをきっかけに始めたブランド「タラン/taran.」は、初の訪越から7年を経て、今や在住外国人はもとより多くのベトナム人ファンも持つ人気ブランドとなった。
友人との旅行が人生の転機に
苦手な語学はスタッフに支えられ克服
「日本で観光業として洋菓子店の店長をしていた頃、友人に誘われ旅行でダナンを訪れました。当時は街の場所はおろか、ベトナムのことすらよく分かっていないほど。来てみると豊かな自然や活気に湧く街に、観光地としての可能性を感じました。ただ、それなのになぜか良いお土産がない。勿体ないと思いましたね」
そんな彼女の前に、旅先のマッサージ店でひとつのヒントが舞い降りた。使用されていた自然由来のオイルの高い品質に驚いたのだ。
「アトピー性皮膚炎の症状を持っていたので、幼い頃からオーガニックのコスメには慣れ親しんでいました。良い素材はあるのに、お土産や自分用に気軽に購入できる製品がない。そこでベトナムの素材を生かしたオーガニックコスメブランドをやろうと考えました。20代のうちに起業したいと思っていたこともあり、多くのチャンスには出会えないと、帰国時には既に何をやるか構想を固めていました」
日本へ戻ると早速ベトナム関連の企業を訪問するなど情報収集に走った。そして旅行からわずか4ヶ月後にベトナムへ移住。ハノイでカフェの立ち上げに携わりつつ2017年、念願の自社ブランド「タラン」をダナンで設立。スタッフを雇い、専門家の手を借りながらコスメの開発に勤しんだ。
「実は英語もベトナム語も、語学が得意な方ではないんです。最初は言葉の問題に不安もありました。しかし、ベトナムの大学では第二外国語に日本語選択があるため、アルバイトをしながら一生懸命に日本語を学んでくれる学生の多くに本当に助けられました。中には学生時代4年間働いてくれた後に日本へ行った方もいて、今も連絡をくれたりすると、とても嬉しいですね」
当たり前は国それぞれ
違いを受け入れ心強い仲間に
品質の高さから製品の人気は上々。順風満帆に見えたベトナムでの起業だったが、時に根本的な問題にも直面した。
「たとえばベトナムでは、接客は商品を売るためだけにすると考える人が多いんです。でも、お客様の目的はあくまでもベトナム旅行。そこで、まずベトナム自体を楽しんでいただけるように無料のウェルカムドリンクをお出ししたり、雨の日には雨具をお渡ししたり、現地の旅行情報を提供したりしているのですが、当初はなぜ無料でそんなサービスを行うのか、スタッフに理解してもらえませんでした」
「製品を販売するためではなく、お客様に喜んでいただくために存在する」。その定義から根気よく伝え続けた。結果、今では一緒に写真撮影を頼まれるなどファンがいるほどのスタッフもでき、時には想像以上のサポートをしてくれるような心強い仲間になったという。
「学んだのは『日本の当たり前はこの国では違う』ということ。決めつけや当たり前という考えを捨て、違いを受け入れることが大切。物事に対するキャパシティが広がった気がします」
ベトナムで学んだ自分の価値
自信を持って挑戦を
社会人経験が日本よりも長くなったベトナムでの暮らし。現在はとても居心地の良さを感じるが、近年厳しくなっているビザ取得条件の緩和など、より外国人がベトナムに拠点を置きやすい環境が揃えばと期待している。
「この国で日本人がチャレンジできることは、たくさんあります。そのためにも、もう少し気軽にベトナムに滞在し、挑戦できるようになれば嬉しいですね」
事実、日本では高く感じていた起業に対する考え方も、ベトナムでのチャレンジを経て大きく変わった。
「ベトナムの人々は自信があり、自分自身の価値を分かっている人が多いなと思います。資格が必要とか、誰かに認められて始めるのではなく、一生懸命に自分が良いと思ったことを形にしていく行動力があると感じました。まずは自分自身の選択に自信を持つことが大切だと学ばせてもらいました。やりたいことが形になる、そんな国だと思うんです」
1989年北海道生まれ。洋菓子メーカーで販売店の店長として勤務した後、ベトナムへ移住。 |
画家
VTV4日本語番組編集者・アナウンサー
ブロガー/「ベトナムリアルガイド」運営