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生産者と飲食店の橋渡し
現地の食品流通改革に貢献

田中 卓(たなか たく)
カメレオCEO兼ファウンダー

田中 卓(たなか たく)

農協のような仕組みがないベトナムで、生産者と飲食店の間に起きる様々な流通課題。テクノロジーと自社流通網を駆使し、その効率化を目指す人がいる。ベトナム初の飲食店向けBtoB仕入れプラットフォーム「カメレオ/KAMEREO」代表の田中卓さんだ。

ベトナムで念願の飲食業界へ
独自システムで業務効率化を手助け

「幼い頃から飲食店をするのが夢でした。1度は証券会社で働いたものの、飲食業の方々のお話を伺ううちに、やはり『飲食の道に行きたい、成長中の活気のある国で勝負をしたい』と思い、海外に目を向けるようになりました」

しかし、知らない海外でゼロからの起業はハードルが高い。そこで経験を積むべく新興国を中心にリサーチを開始。興味を抱いたホーチミン市の日系レストランで採用を勝ち取り、ベトナムへ渡った。しかし、ベトナムの飲食や食材業界を知るにつれ、様々な課題に気がついた。

「日本には農協や大手卸売業者があり、農産物の流通経路が確立されています。一方、ベトナムの飲食店は市場や複数の卸業者から個々に仕入れることが多い。発注方法が都度異なる上、受発注のミスなど多くの問題がありました」

その経験を活かし2018年に独立、「カメレオ」を立ち上げた。提供するのは多彩な商品を一堂に揃えた受発注システム。ワンクリックで一括注文でき、数量や金額もシステム上で管理できるようにした。しかし、受発注の処理や配達は利用企業が行うため、商品を間違えたり配達が遅れたりと問題が頻出した。

「そこでダラットに集荷場を作り、自社で野菜を仕入れ販売する形に変更。配送も自社で行い、川上から川下まで網羅するサプライチェーンを構築しました。提携企業はレストランのほか、コンビニエンスストアや学校、病院など約2000社。日本人は私しかいませんが、現場のオペレーションから日々の改善まで、ベトナム人スタッフに助けられています」

アイデア次第で可能性は無限
今後もベトナムでの事業に注力

ベトナムの食品流通に改革をもたらしたカメレオ。ベトナムでの挑戦は、田中さんの人生にも大きな変化をもたらした。

「日本ではできないことができる、それがベトナムの強みだと思います。2023年の今年、カット野菜の販売も開始しました。日本には既に当たり前にあるものですが、この国では新しい商品になることも多い。そう考えると、チャレンジできる幅自体がとても広い国だと思います」

親日、真面目な国民性、食事の美味しさなど、生活のしやすさも長期で事業を行う上で重要と話す。偶然訪れたベトナムだったが、今では大きな可能性を感じるとともに、この国により深く関わっていくつもりだ。

「挑戦してみてうまくいけばよし、もし失敗してもまた挑戦すればいい。そのため当面はホーチミン市に集中する予定ですが、数年後にはハノイやダナンへの展開もできればと思っています。将来的にベトナムで最も大きなサプライチェーンに育てられれば嬉しいですね」

食品物流の新たな形を模索
より多くの日系スタートアップにも期待

カメレオではベトナム国内の農産物を主に取り扱うが、日越間の将来にも期待を寄せる。現在、両国の農産物の輸出入には規制が多く、取り扱える種類も少ない。しかし、やり方次第では新たな道が開けるという。

「単に商品を輸入するだけでは価格が上がり、売ることが難しい。しかし、日本の技術を移転し、日本の商品をベトナムで作ることはできるかもしれない。同じものを安価で作れるため、ベトナムにも広げやすい。また、輸出入の規制が和らげば、ベトナムの良質の農産物を日本に安価で提供することも面白いと思っています」

同時に、自身だけでなく、日本からベトナムへの進出を目指す若い力も増えればと願う。

「現地ではまだ日本人が手がけるスタートアップは多くありません。しかし、この国にはまだ参入できる余地が多くあります。スタートアップは人々の不便や問題を解決することが事業の根幹。日本との距離も近く、費用面でも比較的安価で始められる。ベトナムは若い方々がチャレンジするには本当に良い国だと思いますよ」

1989年静岡県生まれ。大学卒業後、外資系証券会社に入社するも、飲食業に関わりたいとの思いからホーチミン市の日系レストランに転職。COOとして店舗の立ち上げやマネジメントに携わる。現地飲食店が抱える諸問題に触れ、2018年に独立し「カメレオ」を設立。

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