野原 弘平(のはら こうへい)
高い技術力を持つベトナムのエンジニアを活かしたラボ型開発で、日本のIT業界を支える「ワコンチェ/Wacontre」の野原弘平さん。2016年からは人材サービス事業へも活躍の場を広げ、求人サイトの運営から人材紹介、自社開発のツールを用いた組織管理など、ベトナムでの会社運営に役立つ各種サポートを行っている。
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高い技術力を持つベトナムのエンジニアを活かしたラボ型開発で、日本のIT業界を支える「ワコンチェ/Wacontre」の野原弘平さん。2016年からは人材サービス事業へも活躍の場を広げ、求人サイトの運営から人材紹介、自社開発のツールを用いた組織管理など、ベトナムでの会社運営に役立つ各種サポートを行っている。
ITを軸に柔軟に業態を変化
自立したプロの共同体を目指して
学生時代から海外と繫がりを持つビジネスサークルに入り、起業や海外での活動に興味を持っていたという野原さん。そんな彼が2010年、数ある国の中から距離的・文化的に近く、今後の発展性を考え選んだのがベトナムだった。
「まずはホーチミン市からハノイまでバスで縦断して視察を行いました。親切な人々や活気に沸く街並みに、ワクワク感が募りました」
当初、事業内容として決めていたのは「IT関連業務」のみ。そこでまずは自社のECサイトを作りベトナム製絵画の販売を始めた。その後はウェブサイト制作やシステム構築など企業からの案件が相次ぎ、社員数も増えていった。
しかし、日本からの受注案件では、どうしても指示をこなす受け身仕事に終始しがちになる。事業自体は順調だったが、自社の発展にはより自律的な組織作りが必要とされた。「会社のために自ら考えて動く」、そんな社員になってもらうにはどうすれば良いか。自問自答を繰り返す日々に、変化が訪れた。
「ちょうどオフショア開発からお客様が直接開発を行うラボ型に業務の軸を移した頃のこと。手の空いた弊社のエンジニアに自社アプリやウェブサイトの開発をしてもらいました。始めたのは求人サイトなどのベトナム国内向けのサービスです。すると、みんな生き生きと仕事をしてくれるようになったんです。ベトナムの人々や現地企業がお客様となるため、社員とお客様の間に直接の接点ができたことで、自発的に取り組んでくれるようになりました。もともとが優秀な人たちなので、意識や動機付けが合えばきちんと返してくれると気づかされました。おかげで日本人のお客様への対応を、今ではベトナム人スタッフが行ってくれることも。ふとしたきっかけでしたが、個々が専門性を持ち、自立したプロの共同体になれたことはとても嬉しいですね」
社会の基本はベトナムが教えてくれた
この国の価値を高めるサービスを提供したい
ラボ型開発では勤怠管理や労務管理のほか、顧客に代わり採用活動も行う。そこで野原さんは関連業務を発展させ、総合求人サイト「ヴェッコイ/Viecoi」を立ち上げた。
「求人サイトは現地企業の登録が大半。人材紹介も行っていて、こちらは日系企業やIT人材の案件が多くなっています」
求人から開発、自社アプリを用いた顧客の社員管理まで、ITを通じて日越を繋ぐ野原さんだが、彼がベトナムへ来たのは23歳の頃。成人後の生活はほぼベトナムで過ごしてきた。
「海外でのビジネスはその国を理解し、対等であることが基本。しかし、比較的若い年齢でベトナムへ来たとはいえ、当初は『日本ならこう』と、なにかにつけて比較してしまうこともありました。時に社員から『ここはベトナム!』と戒められることも。無意識の中で所得の差などを理由に区別していたことがあったかもしれません」
しかし、両国をまたぐ長年の活動を経て、今では異なる思いを持つ。
「日本人とベトナム人は共に同じ人間。しかも、私は日本との仕事の仕方から新興国の価値観まで、全てをここで教えてもらいました。ベトナムは私を育ててくれた国。だからこそ、今後はベトナムを軸に、この国の存在感や価値をより高められるようなサービスを提供していければと思っているんです」
ベトナムの高度人材に期待
日越共同でIT技術の革新も
日越ビジネスの最前線を走ってきた野原さん。それだけにベトナムに対する期待は厚い。
「ベトナムには優秀な人材が多いので、今後ベトナムで成功したサービスをアセアンで多国展開する際には彼らに責任者となってもらい、グローバルで活躍できる人材の排出にも努めていきたいと考えています。また、求人サイトの企業だけでも3~4万社の登録があるので、事業提携やM&Aなど、ベトナムを拠点とした企業間ビジネスプラットフォームにもなれればと思っています」
最終的には若い起業家やスタートアップ企業の育成を行うインキュベーションセンターの役割も目指したいと話す。
「IT関連ではブロックチェーンやWeb3といったプロジェクトがベトナムでは盛んで、日本より進んでいる部分もあります。しかし、それらのプロジェクトを日越で進めている話はあまり聞きません。技術交流などを通じて、日越が互いの強みを活かしたハイブリッドな関係を築き新しいものを生み出す、そんな機会が増えればと期待しています」
1986年東京都生まれ。大学卒業後、ITベンチャー企業に就職するも独立を志す。海外での起業を模索し2010年に渡越。「ワコンチェ」を設立し、ウェブサイト制作や多岐にわたるシステム開発に従事する。現在はラボ型開発を行う「ワコンチェ」と人材サービス「ヴェッコイ」2社の代表取締役を務める。 |
画家
VTV4日本語番組編集者・アナウンサー
ブロガー/「ベトナムリアルガイド」運営