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日本から学んだことを生かして
ベトナムと日本の発展に貢献したい

レ・クアン・フイ
化学工学博士、シーカベトナム社/プロジェクトマネジャー

レ・クアン・フイ

日本語学部で教鞭を執る母親の影響で、レ・クアン・フイさんは幼い頃から日本語と日本文化に触れて育った。イギリス留学を経て日本で化学工学博士となりベトナムに帰国した現在、日本で得た仕事と生活の知識がそのまま自分の成長に役立ったと話す。

日本語を教えていた母が
繋いでくれた日本との縁

ベトナム国家大学ハノイ校外国語大学の準教授として日本語・日本文化を教えていたフイさんの母親は、フイさんが6歳と8歳のときの2度、息子を連れて日本を訪れた。これがフイさんに日本との最初の縁だった。

「日本との縁は自然に生まれたものでした。自宅で日本人学生のホームステイを受け入れることも多かったので、日本人と日本文化にはとても馴染みがあります」

17歳から故郷を遠く離れたイギリスに留学して修士号を取得したフイさん。家族との距離をできるだけ縮めつつ自分の専門を極めたいという想いから、これまで縁のあった日本で博士号を取得するために2015年に東京工業大学博士課程に入学した。

「アジアの文化圏に再び戻れたことがとても嬉しかったですね。日本での生活はとても便利で快適な一方で、伝統的な文化も多く残っているのが印象的でした。日本で大学に通ったり働いたりした6年の間に身に着いた日本の習慣は、いつの間にか自分の一部になっていきました」

コロナ禍の2021年にベトナムに帰国し、現在はハノイにあるスイス系の建設資材会社でプロジェクトマネジャーを務めている。

「会社でも『ありがとうございます』などの感謝の言葉をよく使っているので、欧米人の上司に『日本人みたいだね』と言われています(笑)」

日本式の規律性は
研究者にとって必要なもの

日本の大学院では、高水準の研究環境が整っていた。正確さと細心の注意が求められる環境で、フイさんは規律性を身につけたと話す。

「アカデミックな研究において、正確さはとても大切です。日本の大学院では、プロジェクト管理について多くを学びました。研究や仕事全般において、日本人が作成した非常に緻密な手順や厳格な規定をきちんと守れば、正確な結果が期待できます」

研究室では、二酸化炭素を用いた水処理プロセスデザインのプロジェクトに携わった。使用する薬品や機械などの綿密な計画を立て、同時に火災時の安全性や応急処置などの事故対応計画も作成した。

「実験の準備が整ったら、自分で機械を設置してテストを行います。システムの監視、測定、データの記録、結果の分析などをすべて一人で作業するため、実験には10~18時間がかかりました。こうした経験から、集中力と周到な用意のスキルを身につけました」

日本で得たこれらの知見は、その後のキャリア形成に役に立ってきた。ベトナム人の若者にそのノウハウを伝えるべく、フイさんはベトナムメディアの取材で日本留学における具体的なアドバイスを語っている。

「イギリスと日本での12年間の留学を経て、西洋の自由さと東洋の規律が大切な2つの柱になりました。多くの体験をさせていただいた国々にとても感謝しています。何か恩返しをしたくて、ベトナム進出を希望する日本企業への助言や、ベトナム企業への日本の投資家の紹介などを個人的に行っています」

日本の知見をベトナムに伝え
両国ますますの発展を

フイさんは、長く良好な関係を保っているベトナムと日本の関係が、より発展していくことを願う。

「100年以上前に政治家のファン・ボイ・チャウ(Phan Boi Chau)は、ベトナム人を日本に送り始めました。それほど日本とベトナムの関係は長く、共通点も多くあります」

今のベトナムの発展スピードが1970年代の日本と同じだとされることは、両国の発展にとってチャンスだと話す。

「1970年代に日本が経験したことを、今ベトナムが経験しているということ。日本が得てきた経験は、そのままベトナムで生かせるはずですから、その知見をベトナムに伝えてもらえると嬉しいですね。たとえば技術移転の強化もその1つの例でしょう。ベトナムの若くて優秀な人材は、この先の日本経済に必ず貢献していけると思いますから」

インペリアルカレッジロンドン卒業後、2015年に日本文部科学省奨学金留学生として東京工業大学の博士課程に入学し、2019年に博士号(化学工学取得日本でドイツ総合化学会社「ビーエーエスエフ(BASFジャパン」の勤務を経て、2021年ベトナム帰国。現在はスイス系建設資材会社「シーカ(SIKAベトナム」勤務 

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