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ベトナムの溢れるエネルギーに吸い寄せられ起業
食を通じて日越の発展に寄与したい

荒島 由也 (あらしま ゆうや)
スターキッチン/スター・
コンサルティング・ジャパン創業者兼CEO

荒島 由也 (あらしま ゆうや)

荒島由也さんはジェトロ・ホーチミン事務所の「食品・農林水産分野コーディネーター」も務める食のプロ。日本の洋菓子を中心とした料理教室のほか、各種スイーツの製造・卸・販売や、日系企業の進出支援も行っている。両国を食で繋ぐ、そんな彼にとってのベトナムとは。

可能性を感じ起業を果たすも
思わぬ食文化の差に苦戦

「日本では経営コンサルティング会社に勤務していましたが、いずれは独立を考えていました。市場の成長や可能性から注目したのがアセアン地域。中でもこの10年で最もチャンスがあると感じたのがベトナムでした。特に日本で経済成長を経験したことがない自分は、まさに“バブルの勢い”に飛びこんで勝負がしたかったんです」

当時のベトナムは成長に貪欲で、上昇志向のエネルギーに満ちていた。しかし、経済成長は著しくも、人々には趣味の選択肢が少ないように思えた。そこでクッキングスタジオ「スターキッチン/STAR KITCHEN」を立ち上げた。

「試食会を開くと毎回約200名もの申し込みが殺到しました。ただ、同時に思わぬ違いにも気づきました。日本で料理教室といえば自分磨きのイメージ。ところがこの国では家族や恋人のためにケーキを作りたいという動機が多かったんです」

「作り方を学ぶだけでなく販売もしてほしい」との要望に応え、洋菓子の製造・販売を開始。コンビニエンスストアやカフェへの商品提供も始めた。現地の日系デパートへ出店も果たし、その勢いは増すばかりに見えた。ところが、いざ店舗販売を始めると、思うように売上げが伸びない。

「ベトナムではお菓子の甘さは果物が基準だったんです。日本で菓子作りを学んだパティシエですら、果物だけを食べたいと言うほど。洋菓子は砂糖や油脂が多すぎる。さらにケーキは誕生日など特別なイベントで食べるもので、日常的ではなかったんです」

確かに現地のお菓子といえば塩気のある食べ物やスナック菓子か、ゆでたサツマイモやトウモロコシ、豆など甘く煮たチェー(ベトナム風ぜんざい)など自然由来の甘味がほとんど。圧倒的な食文化の差に驚いた。

「見たことがないから食べない、体験すると好きになる。そんな思い込み自体が間違いでした。スタッフだったパティシエも私に言い辛かったと思うのですが、改めて気づかせてくれました。そこで今はベトナム人が子どもの頃から食べ慣れたチェーなどのローカルスイーツ、瑞々しいフルーツなど、彼らが好む商品をメインに販売しています」

日本が抱える諸問題を
ベトナムから解決する

痛い目にあった経験があるからこそ、ベトナム人の嗜好が分かる。失敗を強みに変えて、新たなチャレンジにも取り組み始めた。

「実は幼い頃から政治に関わりたいという思いがありました。今、日本では人口の減少や労働力の不足、国内市場の縮小など、様々な要因から海外に目を向ける企業や地方自治体が増えています。そこで食の進出支援を行う『スター・コンサルティング・ジャパン/STAR CONSULTING JAPAN』を設立しました」

ベトナムには日本の食文化や料理を知りたい人が多い。ベトナムでの例がうまくいくのであれば、きっと他の国でもその経験が活きてくるはず。ひいては日本の政策にも活用できればと願う。

「料理教室から製造、小売まで、今までの多くの経験をしました。これからはベトナムへの恩返しの意味も含め、日本とベトナムをどう繋げるか。まだ挑戦の途中なんです」

変わりゆく日越関係
共に価値を作り出す未来へ

今後の両国の関係について、荒島さんはこうも話す。
「今や生産国・労務の提供国というよりも、ベトナムの市場自体に注目が集まっています。新規投資も製造業よりサービスや小売の割合が増えている。今後はより対等なパートナーシップが求められるようになると思います」

また、ベトナムは親日国だが、それだけでは両国の関係は発展できない。一方通行ではなく、共同で価値を作り出していく発想が大切と指摘する。

「お菓子にしても同じです。日本の商品をベトナムに広めるだけでなく、ベトナムの特色や良さを日本に紹介することも重要だと考えます」

そこで、スターキッチンでは近年、バインミーをモチーフとしたラスクなど、ベトナムらしいお土産の開発・販売に力をいれている。自分たちの食文化をPRするとあって、ベトナム人スタッフも一段とモチベーションが高いという。

「日本に好意的なベトナムの人はまだ多い。その積み重ねを活かすには、今後は考え方を変える必要があります。私自身ができることもベトナムにはたくさんあるので、スターキッチンと支援事業の両輪で日本とベトナムに貢献できればと思っています」

 1983年東京生まれ。外資コンサルティング会社勤務を経て独立。
2013年にホーチミン市にて料理教室「スターキッチン」を開業後、洋菓子製造・販売を開始。
2021年には培ったノウハウを活かし「スター・コンサルティング・ジャパン」を設立。
日系企業や地方自治体にベトナム市場への進出支援も開始した。

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