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ベトナム水産業の発展のために
フグ食文化を根付かせたい

ヴゥ・テゥイ・リン
ふぐ処理師・食物栄養学博士

ヴゥ・テゥイ・リン

ベトナムで「フグ博士」と呼ばれるリンさんは、フグの捕獲も食べることも法的に禁止されているベトナムにおいて、フグの養殖・加工・輸出を実現し、海産分野における日越の協力を推進するために邁進している。フグ食文化をベトナムに根付かせたいというリンさんの人生は、フグ一色だ。

日本で実現した
フグと運命的な出会い

ベトナム国家大学ハノイ校日本語学科の学生だったリンさんは、新卒でミツイ水産に入社するまで、フグのことを全く知らなかった。フグは同社の主力商品で、下処理から製品加工までフグに関わるすべての工程を行う。仕事をすればするほどフグの面白さに目覚め、会社を辞めて十文字学園女子大学でフグを研究することを決意した。

「フグの業界で働いているのはほとんどが男性で、女性の私にとって不利な点がかなりあります。フグの知識や日本語の専門用語を覚えるのも一苦労で、疑わしい目で見られることもあります。一方、そんな私の頑張りを見て、ミツイ水産代表取締役の伊藤吉成さんや、十文字学園女子大学の山本茂教授をはじめとする、多くの日本人がとても熱心に協力してくれました」

フグに関する博士論文の審査に合格した後、リンさんはミツイ水産に復職した。ベトナムと日本の食品輸出入を促進し、両国の良質な製品の市場を拡大するなど、学んだ専門知識を商業の分野で活かしている。

「日本では、自分の夢を見つけ、どのように生きていきたいかを考えることができました。常に最高水準の品質を目指す姿勢や仕事の進め方などについて、多くのことを学びました。上司やパートナー、お客様などからの信頼と評価は、私が常に大切にしている貴重な贈り物です」

ベトナムにおけるフグ製品の
可能性を切り開く

フグにこだわってキャリアを築いていこうと決意していたものの、その先には不安があった。だがベトナムの沿岸地方でフグの調査をしたことで、具体的な道筋が見えてきたという。

「ベトナムはフグのポテンシャルが高い国ですが、毒性が懸念され、養殖などが禁止されています。漁師さんたちがフグの豊富な資源を活かして生活を向上できないことに、非常に危機感を覚えました。ベトナムでフグ製品の可能性を引き出し、漁師の方々の苦しみを軽減するお手伝いをしたいと思ったのです」

安全で味もよく、経済的価値のあるフグのことを知ってもらうために、ベトナムでのフグに対する認識を変える必要があるとリンさんは考えた。

「ベトナムと日本の水産業者が協力して、天然のフグを仕入れてバイオ製品を作ったり、日本のフグ加工技術をベトナムへ移転したりすることを呼びかけています。また、ベトナム国立栄養研究所と連携して、ベトナムで養殖しても安全なフグの種類を調査しているんです」

多くの努力の末に
得た楽観的な結果

リンさんの努力は、徐々に成果を上げている。2021年11月末にファム・ミン・チン首相が日本を訪問した際、ベトナム政府はミツイ水産と会談し、ベトナムのフグの可能性を引き出す計画を立てた。また、ベトナムと日本企業間の協力に関する覚書「ベトナムにおけるフグ研究の科学的協力に関する合意書」により、多くの良きパートナーと出会えるようになった。今後は在日ベトナム大使館もフグ研究の推進役として関わっていく予定だ。

「フグ関連のプロジェクトに加え、ベトナムの消費者に日本食の正しい情報を提供する『日本食文化交遊会』をベトナム人や日本人と一緒に立ち上げています。また、ベトナム人留学生が日本で勉強したり働いたりする機会を見つけるための支援もしたいです。若い人たちにも、私のように日本で人生の夢を見つけてほしいと願っていますから」

 ベトナム国家大学ハノイ校日本語学科卒業。ミツイ水産(宮崎県)への就職でフグを知り、退職して十文字学園女子大学の修士課程、
博士課程でフグの研究に取り組み博士号を取得(食物栄養学)。日本で調理師免許とふぐ処理師免許を取得。
現在はミツイ水産に復職し、同大アジアの栄養・食文化研究所でも研究を続けている。

 

取材・文/Sketch Co.,Ltd.

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