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両国の異なる言語を駆使し
日越交流の更なる発展を願う

田崎 広野(たざき ひろの)
通訳・翻訳者

田崎 広野(たざき ひろの)

語学の専門家として、日越間の関わりを影で支える田崎広野さん。ビジネスから医療、出版まで、様々なジャンルの通訳・翻訳を手がけ、彼女にお世話になった人や企業は数多い。ベトナム語にとことんこだわることで、両国の交流のお手伝いができればと熱く語る。

ベトナムで出会った衝撃から
通訳・翻訳の世界へ

高校生の頃は得意の英語を活かし、北米への進学に興味を持っていたという田崎さん。しかし、大学受験のタイミングで父親から「今後は東南アジアが重要視される」とアドバイスを受けて方向を転換。英語とアジア言語の両方を専攻できる新設の学科に入学し、そこで選んだのがベトナム語だった。しかし、大学のプログラムで初めてベトナムを訪れた際、衝撃的な体験をする。

「学んでいたのはハノイの言葉。ホーチミン市を訪れたので全く通じませんでした。その悔しさからもっと知りたいと思うようになり、交換留学へ1年間行くことにしました」

留学によりベトナム語は上達したものの、今度は語学を使ってベトナム自体をより知りたくなった。そこで、卒業後すぐにベトナムの大学院へ通うことに。後に現地日系企業で翻訳の職も得て、通算8年ほどベトナム暮らしが続いた。

「日々充実していましたが、日本での社会人経験のなさを感じて2011年に日本へ帰国しました。現地の経験を活かした仕事に就いたものの、事務職ではなく更にベトナム語を突き詰める仕事がしたくて。2016年に会社を辞め、フリーランスの通訳・翻訳者になりました」
いざ始めてみると新たな課題も見えてきた。

「ベトナム中部の言葉は本当に難しい。特に司法通訳では地方の方と対面することが多く、かつ、間違いは許されない分野。自分以外にベトナム語を分かる人がいない現場がほとんどなので、今でも苦労しています」
そんな時に強い味方となってくれるのが、これまで築いてきたネットワークだ。

「大学院時代の友人は高学歴・高収入の方が多い一方、プライベートな知り合いではサービス業や職人の方も。自分の経験だけでは知り得ないような自然な表現やスラングの確認など、幅広い社会の層と関係を築けたことは本当に役立っています」

何があっても大丈夫
人生の背中を押してくれたベトナム

ベトナムとの関わりは仕事だけでなく、自身の性格にも変化を与えた。「何があっても大丈夫。なんとかなる」と楽観的になったと話す。

「昔の私だったら、食べていけるだろうか、失敗しないだろうかと、フリーランスになるのにも躊躇したと思います。ベトナムの人々はうじうじと悩まず、思い立ったらすぐ始め、だめだったらすぐに切り替える。人生や仕事の選択肢の枠が外れた気がします」

たとえうまく行かなくても経験値は残る。技術的な面もあるが、精神的に大きな影響を受けた。
「何事も、まずはやってみないと勿体ない。ベトナムとの出会いは言語だけでなく、人生にとても大きな影響を与えてくれたと思います」

未来を担う子ども達のため
経済交流の次は文化的な交流を

今後はライフワークとして、「文化的な交流にも力を入れたい」と話す。そのひとつが絵本だ。現在、タイハーブック(Nha Sach Thai Ha)社から発行されている日本の絵本『しろくまちゃんのほっとけーき』のシリーズは、彼女自ら企画を持ち込み、ベトナム語版の出版を実現させたものだ。

「サブカルチャーなど若者に人気の作品は数多くベトナム語化されていますが、さらに下の子どもたちにも日本の良い作品を読んでもらいたい。そしてその絵本を読んで育った世代が自分で作品を作り日本で出版する。そのとき私が翻訳に関われれば、そんなに嬉しいことはないと思うんです」

現在の交流は留学や就職、技能実習性など実務的な分野が多いが、両国の発展には文化や芸術分野での交流も大切という。

「文化には茶道や書道など伝統的な分野以外にも、様々なものがあります。それらの日本文化をベトナムへ、ベトナムの文化を日本へ。両国が刺激を受けて一緒に何かできること、そのお手伝いができれば最高ですね」

 1983年カナダ生まれ。神田外語大学で英語とベトナム語をダブルメジャーとして専攻。
ベトナムでの大学院留学を経て、ベトナム情報配信サイトで翻訳業務に携わる。
2011年の帰国後は、団体職員などでの勤務の後、フリーランスの通訳・翻訳者として独立。

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