グエン・ハイ・アイン・トゥアン
15年にわたり日本に暮らし、IT業界とマーケティング業界で活躍するグエン・ハイ・アイン・トゥアンさんは、100万人以上のフォロワーがいるベトナム人向けSNSを運営する「TAIHENネットワーク」設立者だ。ITとマーケティングの知識を生かして、日本での生活とベトナム人の橋渡しを行うと共に、日本で新たなビジネスも展開する。
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15年にわたり日本に暮らし、IT業界とマーケティング業界で活躍するグエン・ハイ・アイン・トゥアンさんは、100万人以上のフォロワーがいるベトナム人向けSNSを運営する「TAIHENネットワーク」設立者だ。ITとマーケティングの知識を生かして、日本での生活とベトナム人の橋渡しを行うと共に、日本で新たなビジネスも展開する。
日本での一人暮らしを
充実した人生に変える
ホーチミン市工科大学の1年生だったトゥアンさんは、日本の文部科学省奨学金を獲得して大阪と熊本県に留学した。学費や家賃などがすべて支給される奨学金のおかげで、生活自体は問題がなかったが、外国ならではの寂しさを初めて体験した。
「外国人研修生と違い、留学生の私はお金の問題はありませんでしたが、15年前は日本で暮らすベトナム人が少なくて、ベトナム人と話す機会がほとんどありませんでした。ひとりぼっちで暮らして、留学した自分の決断を疑ったこともあったんです」
孤独から逃れようと、トゥアンさんは在日ベトナム学生青年協会に参加。会のSNSチャンネルの運営を担当することで他の在日ベトナム学生人と繋がり、日本の生活に楽しみを見つけた。
「2012~2013年当時はフェイスブックグループに参加するベトナム人学生がとても多く、生活、エンタメ、旅行など日本生活全般に関する話題が盛り上がりました。IT業界で就職した後も、3~4年ほど運営サポートを続けました」
2017年には、学生だけでなく、すべての在日ベトナム人に向けて日本での生活情報をベトナム語で配信するフェイスブックファンページ「TAIHEN」を立ち上げた。
「すべての在日ベトナム人と日本に興味があるベトナム人に、役立つ情報を届けたくて。日本生活を理解している私なら、日本のベトナム人コミュニティに誰よりも有意義な貢献ができると思ったんです」
「TAIHEN」は最大規模の在日ベトナム人コミュニティページに育っていった。
社会貢献プロジェクトから
ビジネス機会が見つかる
フォロワーが増えるにつれ、トゥアンさんはITの知識を生かして生活、エンタメなどカテゴリ別のファンページやニュースサイトを新設。これら10ほどの「TAIHEN」ページを運営するため、日本で一般社団法人「TAIHENネットワーク」を設立し、正式に事業をスタートさせた。
「新型コロナウィルスが流行した3年前、日本のコロナ対策を在日ベトナム人に届けてほしいと、日本の内閣官房長官から頼まれたことがありました。フォロワーの6割は労働者なので、画像や動画などで面白く分かりやすく伝える方法を考えました」
トゥアンさんが作ったソーシャルネットワーキング媒体は、ベトナムと日本の架け橋となることでビジネスの機会も増える。日本政府、在日ベトナム大使館や日本企業がベトナム人に向けた情報発信を望んでいることを知ったトゥアンさんは、広告代理店業を始めた。
「東京で開催された『ベトナムフェスティバル』などでの取材やコーディネートも担当させていただきました」
今ではベトナム航空などのベトナム大手企業とも取引をするようになった。
日本とベトナムの隙間を埋め
より深い関係づくりを
日本で会社を経営する中で、「日本とベトナムの隙間を埋めたい」と考えている。日本人とベトナム人が一緒に、明るい未来へ進めるようにという願いからだ。
「埋めたい最初の隙間は、ベトナム人と日本人の考え方の違いです。柔軟な考えのベトナム人は最初、日本人のように規則に従い厳しく仕事することに慣れず苦労します。仕事でのより良い目標や結果を目指して、お互いの考え方を理解できればと思います」
ITをはじめ、テクノロジー分野の開発スピードが早いベトナムは、労働力不足の日本を支えられるとも考える。
「日本がベトナム人によりレベルの高い仕事をまかせて、優秀な人材を育ててもらえれば嬉しいです。お互いがお互いのニーズに応えることで関係性を深め、一緒に未来を作っていくことを願っています」
2008年に文部科学省奨学金(MEXT)を受けて、大阪大学で日本語を学び、その後は熊本大学に留学。 |
画家
VTV4日本語番組編集者・アナウンサー
ブロガー/「ベトナムリアルガイド」運営