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ベトナムと日本の相互理解で
日本基準の高度IT人材の育成を

グエン・チューン・トゥ
GMOフィナンシャルホールディングス/ITエンジニア

グエン・チューン・トゥ

経済的に恵まれない家庭で育ったグエン・チューン・トゥさんは、ホーチミン市工科大学に入学後、優秀な成績を収めて日本に留学。日越文化交流活動やボランティアへの参加を通して日本人の考え方を学んだ経験を生かして、ITエンジニアとして日系企業とベトナムIT人材をつなぐ役割を果たしている。

極寒の冬に贈られたコートの温かさ
文化交流や被災地ボランティアに積極的に参加

ホンダ製のバイクが10年以上も使える耐久性を備えていることから、日本の技術の素晴らしさを知ったトゥさんは、いつか日本に留学したいという夢を子どもの頃から抱いていた。2006年にホーチミン市工科大学の電気電子情報工学部に入学すると、新潟の長岡技術科学大学による「日本語のできる指導的技術者の育成」を目指すツイニングプログラムに参加。その後、日本語と大学の総合成績でツイニングプログラムの1位に輝き奨学金を獲得し、2009年の冬に長岡に留学した。

「寒くてたまらなかった私に、留学生の支援グループから古着の毛皮のコートをプレゼントしてもらいました。本当に暖かくて、とても貴重なものでした。日本人の温かさを感じた最初の思い出です」

留学中は同大学の留学生が集まる国際交流同好会(NUTiSA)に所属し、長岡市日越交流イベントで司会を務めるなど、ベトナムを日本人に紹介する活動に積極的に参加した。また、大学院修了後に上京してからは、日本企業で勤務しながら、ベトナム料理教室を行う非営利団体「ベトアジ/BETOAJI」でレシピを書いたり、食材を用意したり、ベトナム料理の作り方を日本人に教える手伝いをした。

「こうしたイベントや活動を通じて、伝統衣装のアオザイや、ベトナム北西部の少数民族のバンブーダンス(Nhảy Sạp)など、ベトナム文化に興味をもってもらえることが分かりました」

2011年に東日本大震災が発生し、多くの人々が避難所での生活を余儀なくされた。トゥさんは、学校へ行けない子どもたちに科目を教えるボランティアに申し込んだ。

「金銭的な援助はできなくても、自分の力と知識で困っている人を手伝いたくて。子どもたちに英語や数学を教えたり、お年寄りなどと話をしたりしました。ボランティアに参加した短い時間の中で、特に日本人の粘り強さを知りました。大変な状況にあっても、決して屈することなく読書や仕事、勉強といった日常生活を維持していたことが印象に残っています」

ベトナムと日本の考え方の違いを知り、
そこから学んだ責任感

人生のあらゆる問題は財務と関りがあると考え、フィンテックの分野で自分の能力を試してみたいと思ったトゥさんは現在、証券・外国為替(FX)事業や暗号資産事業を展開するグループ会社を持ち、金融システムの開発も手掛ける「GMOフィナンシャルホールディングス」でITエンジニアとして勤務し、FXなどの金融商品を取引するスマホアプリの品質管理を担当している。仕事上でまず感じたのは、日本とベトナムの考え方やアプローチ方法の違いだ。

「日本人は何かを始める前に、とても慎重に考え、非常に綿密な計画を立てます。その細かさが、ちょっと窮屈だと感じられて、仕事を早く進めるためには、それらをスキップしてもいいのではないかと思っていました。ただ、日本流の仕事の進め方に慣れてくると、その綿密さのおかげで品質が確保され、製品の寿命が長くなるということを理解しました」

責任感と言い訳をしないことも、仕事を通して学んだことだ。
「日本人は、幼い頃から責任について教えられています。例えば、子どもが石につまずいて転んだ場合、ベトナム人の親はすぐに子どものそばに来て抱き起こし、転んだ理由を石のせいにする人が多いです。一方、日本人は子どもに自分で立つように促し、歩くときは注意するように教えます。石につまずいて転んだのは自分の責任だと学ぶのです」

日系企業でIT人材を育てることで
日本での人材不足を解決したい

トゥさんは現在、アプリチームでベトナム人のITエンジニアチームと一緒に仕事をしている。
「どのエンジニアも専門知識が豊富な一方、日本語スキルは不足しており、日本人の働き方もまだ把握していないため、仕事が思うようにスムーズに進まないことがあります。日本人とエンジニアの橋渡し役となり、互いがよく理解できるようするのが私の務めです」

そんなトゥさんの願いは、IT分野で働くベトナム人が日本で働く機会が増えることだ。
「日本ではIT人材が不足していますが、ベトナムにはこの分野を愛する若く優秀な人材がとても多い。ベトナムは若い力もあり、変化を受け入れやすく、柔軟・スピーディーに物事を推進できるという強みもあります。これを生かすために、日本企業がベトナム人の人材訓練・インターシップ・リモートワークの受け入れをより拡大し、共に新しい価値を生み出していく機会を増やしてくれることを願っています。そうすることで、両者はお互いの作業方法を理解し、より良い価値を共に創造することができ、ベトナムの人材も日本のマナーや働き方を実体験を通して理解でき、将来的に日本の基準を満たす質の高い人材育成に役立つと考えるからです」

ホーチミン市工科大学と長岡技術科学大学によるツイニングプログラムで2009年に来日、2011年に電気電子情報工学部卒業。2013年に同校で電気電子情報専攻における修士を取得。現在、金融・システムの開発を手掛ける「GMOフィナンシャルホールディングス/GMO Financial Holdings」でITエンジニアとして勤務し、FXなどの金融商品の取引アプリの品質管理を担当している。

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