レ・ユイ・リン
IT企業を立ち上げる夢を実現するために、日本に留学したレ・ユイ・リンさん。日本のソフトウェア企業でシステムエンジニアとして経験と実績を積み重ね、ベトナム帰国後に「テックゼン/Techzen」社を立ち上げた。ベトナムと日本のIT分野の架け橋として、日本における高度IT人材不足の課題解決の一端を担っている。
Japanese
IT企業を立ち上げる夢を実現するために、日本に留学したレ・ユイ・リンさん。日本のソフトウェア企業でシステムエンジニアとして経験と実績を積み重ね、ベトナム帰国後に「テックゼン/Techzen」社を立ち上げた。ベトナムと日本のIT分野の架け橋として、日本における高度IT人材不足の課題解決の一端を担っている。
日本での留学と就労を通して
IT分野での知識と経験を積み重ねる
ベトナムの発展においてITの重要性を強く認識するリンさんは学生時代、ITを学びながら将来は起業を夢見ていた。2007年にフエ国立大学を卒業後、留学支援制度を提供しているドンズー日本語学校に入学して奨学金を獲得し、日本留学を実現させた。
「夢を実現するためには、留学して先進国の知識や経験を学ぶ必要があると考えました。日本人がもつ自ら進んで常に学ぶ姿勢は、夢に向かって努力する私に大きな影響を与えてくれました」
来日当初、リンさんは生活費を稼ぐために、早朝から新聞配達をしたり、夜遅くまでうどん屋でアルバイトをした。生活はかなり苦しかったが、アルバイトの合間を縫って勉強に励んだ。山梨大学大学院で修士を修め、ソフトウェア企業のアドソル日進に就職してからも、この努力は続く。昼休みも電車の中でも時間を惜しんで勉強し、社内の研修制度での資格取得を目指した。
「日本人の友人たちは、自己学習力が非常に優れていました。日本の教育では実践的な知識を教えなくても、自ら学び続けていくことで仕事で早い成長を遂げるのだと思います。そんな彼らを見て、一生懸命に知識を積み重ねていけば自分の能力が向上することを認識しました」
こうした努力の甲斐あって、リンさんは次第に社内で信頼されるようになり、重要な大型プロジェクトを任されるようになった。
ダナンでソフトウェア開発や、IT人材育成、オンライン教育プラットフォーム事業などを展開する「テックゼン」社を設立したのは2022年1月のことだ。
「社名の『テックゼン』は、テクノロジーと禅の思想から名付けました。刻々と変化する社会に適応しながらも、安定した基盤とビジョンを維持するという意味を込めています」
起業の夢が叶ったのは、
アドソル日進の大きな支援のおかげ
2014年にアドソル日進に入社したことは、キャリア形成として幸運だったと話すリンさん。同社にはオン・ザ・ジョブトレーニングという形で、具体的で明確な社員教育制度があるからだ。
「入社当初から、会社は私が将来ベトナムで起業したいことを知っていました。私がその目標を実現できるよう、6ヶ月や1年といった期間ごとに小さな目標に落とし込む計画も立ててくれました。大小のプロジェクトにおいて簡単な作業から難しい仕事まで関わることで、少しずつ経験を重ねていくことができたのです。また、会社設立には技術だけでなく、経営的な知識も欠かせないというアドバイスもいただきました」
リンさんは、長期的な貢献と優れた業績を評価された従業員2名のうちの1人として、オフィス賃貸料などでアドソル日進の創業支援制度の恩恵を受けているほか、アドソル日進からオフショア開発業務を受託している。
IT人材育成センターを設立し
高度人材を日本企業でに派遣したい
教育業界で働いている両親の影響から、リンさんは教育も「テックゼン」にとって将来的に重要な分野のひとつにしたいと考えている。
「現在はダナン大学と協力し、質の高いIT人材の育成やテクノロジー研究室の開発などに取り組んでいます。『テックゼン』のモットーは『親切な人、親切な商品』。人材への投資が発展の核であることを常に念頭に置いています」
将来的には、リンさんは、日本のパートナー企業と連携してIT人材の育成センターを設立し、日本企業がベトナムの大学などから直接人材を採用できる仕組みを作って、サポートしたいと考えている。
「日本におけるIT人材不足の問題を解消するために、少しでも貢献できればと思っています」
2007年フエ国立大学卒業。2013年に山梨大学大学院で修士号を取得。同年にアドソル日進に入社し、アジャイル開発やオフショア開発など様々なプロジェクトを担当。2020年6月に同社の「ダナン開発センター」の現地責任者となり、2022年1月に「テックゼン/Techzen」社を設立。ソフトウェア開発やIT人材育成、オンライン教育プラットフォーム事業などを展開している。 |
画家
VTV4日本語番組編集者・アナウンサー
ブロガー/「ベトナムリアルガイド」運営