国本 和基(くにもと かずき)
経済発展と国際化が進むベトナムにおいて、人的資源の効果的な管理や活用は企業の命題といえる。そこでSNSやAIなど先端のデジタル技術を取り入れ、エンジニアを中心とした東南アジアの高度人材と企業を繋ぐマッチングプラットフォーム「freeC/フリーシー」で企業課題の解決を目指す「フリクラシー/freecracy」代表の国本和基さんに、ベトナムへの想いを尋ねた。
Japanese
経済発展と国際化が進むベトナムにおいて、人的資源の効果的な管理や活用は企業の命題といえる。そこでSNSやAIなど先端のデジタル技術を取り入れ、エンジニアを中心とした東南アジアの高度人材と企業を繋ぐマッチングプラットフォーム「freeC/フリーシー」で企業課題の解決を目指す「フリクラシー/freecracy」代表の国本和基さんに、ベトナムへの想いを尋ねた。
幸せの意味を教えてくれたベトナム
信頼を寄せる頼もしいパートナーも
ベトナムとの出会いは駐在員としての赴任。車や家を用意され快適な環境ではあったが、多忙な日々を過ごしていた。そんなある日、ふと車窓から街の様子に目をやると、そこには経済的に裕福でなくとも仲睦まじい多くの家族の姿が。その光景に日本と異なる幸福度の高さを感じたという。
「一生懸命に働くことは良いこと。ただ、自分の生活も楽しみ、幸せを貪欲に求めても良いと教えられた気がしました」
ベトナムに魅了された国本さんは、日本への帰国命令を断りベトナムで独立を果たす。数社の立ち上げを経て、2018年にHRテック事業を手がける「フリクラシー」を設立。その後、2019年にローンチした「フリーシー/FreeC」は、今や求職者数55万人、求人企業2万5000社を誇るまでに成長した。
「ベトナムにはコンピュータサイエンスを学んだ高いスキルや知識を持つエンジニアが豊富にいます。腕一本で食べていく気概を持つ方も多く、そうした人々が国内・国外問わず働けるチャンスを創出できればと思っています」
設立当初は3人ほどだった社員も今では約130人に。しかし、採用プラットフォームを運営しながらも、自社の採用には苦労が絶えなかった。
「特にマネージャーレベルの採用は国民の平均年齢の低さから母数が少ないこともあり、本当に難しい。そんな時に助けてくれたのが社員です。口コミなど彼らが呼び水となり、最近は良い人を採れるようになりました。ただ、そのためにはまず彼らからの信頼が必要ということも学びました。明確な会社の方針、高い透明性、言動の一致。代表である私自身が人一倍、彼らに寄り添うことが大切なんです」
採用したメンバーの中には現在、CTO兼COOとして活躍し全幅の信頼を寄せる人物もいる。
「互いに全てを言葉にし寄り添うことで、今では日本人でもこれほど分かり合える人はいないと思える程のパートナーになっています」
人との触れ合いが作る社会
独立した個から社会の一員に
ベトナムでの生活は私生活や自身の考え方にも大きな変化をもたらした。
「日本でもアメリカでも欧州でも、ベトナムを訪れる前はプライバシーを尊重した、独立した個を大切にする社会が当たり前と感じていました。周囲に迷惑をかけてはいけない、そう教えられてきましたが、この国では初対面の人でも年齢や家族構成など、プライベートな事柄にも踏みこんで聞いてきます。住宅街での大音量のカラオケにも本当に驚きました」
しかし、それらは決して迷惑ではなく、人と人との触れあいだと話す国本さん。新しい出会いや喜びは、それらの触れ合いを通じて生まれる。屈託のない会話や人々に囲まれたベトナムの社会に、今では幸せを感じている。
「日本も昔はこういう社会があったのかなと思いを馳せる時があります。今後はベトナムも国として社会のステージが一層上がっていくと思いますが、それらの日常が無くなると寂しいので、うまく共存してもらえると嬉しいですね」
目指すはベトナム発の世界的プロダクト
数年後にはアメリカへの進出も視野に
仕事でも私生活でも、ベトナムへ熱い期待を寄せる国本さんだが、ベトナムの価値を高めるべく、更なる挑戦も始めている。
「フリーシーで培った豊富なアクティブデータを生かし、人事担当者や経営者に利便性の高いサース(SaaS)システムを開発しています。採用管理から評価管理、給与支払いなども包括した総合人事情報システムとして、2023年の夏前にローンチする予定です」
近年、グラブ(Grab)やゴジェック(Gojek)など東南アジア発のITプロダクトが世界で評判を呼んでいる。一方、日本やベトナム発のプロダクトは多くないのが実状だ。そこで、日本とベトナムがタッグを組み、互いに力を合わせ世界に通じる商品やサービスを提供。ひいてはベトナムを飛び出し、米国ナスダックへの上場を実現すると話す。
「ベトナムのエンジニアのポテンシャルは本当に高い。英語で書かれた文献に親しみ、最新の技術も欠かさず身に付けています。とはいえ、エンジニアとの交流を行うにもビザの取得が難しいなど、日本側が抱える問題も多くあります。日越連合で手を取り合うにはグローバルマインドが大切。お互いにフェアな条件で歩み寄り、力を合わせてプロダクトを世界に提供できる環境になればと願っています」
1982年大阪府生まれ。米国の大学を卒業後、大手コンサルティング会社、事業会社等で活躍。欧州や東南アジア各国での駐在経験を経て2012年に渡越。独立し教育関連会社を運営した後、日本のIT専門学校へ入学。卒業後、再びベトナムへ戻り「フリクラシー」を設立、現地の人材と企業を繋ぐ各種サービスを提供している。 |
画家
VTV4日本語番組編集者・アナウンサー
ブロガー/「ベトナムリアルガイド」運営