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日本とベトナムの子どもたちが
スポーツを通して高め合える環境づくりを

池山諒太(いけやま りょうた)
スリーエーサムズアップCEO

池山諒太(いけやま りょうた)

はじめてのベトナム旅行で現地の人たちと一緒にサッカーをして、現地の熱気を感じた。「こんな世界があるんだ」と衝撃を受けたという池山諒太さん。2014年からホーチミン市でサッカーコーチとして新しい道を進み始め、現在は現地の日本人の子どもたち向けのスポーツクラブを運営する傍ら、ベトナムの孤児院の子どもたちにボランティアでサッカーを教えている。

自分の本当にやりたいことが
サッカーのコーチだった

「現地の人たちとサッカーをやる」というミッションを自分に課して、池山さんが初めてホーチミン市に向かったのは大学時代の2010年頃のこと。プロサッカー選手の中田英寿さんが引退後に、世界一周をしながら現地の人々とサッカーをしている姿に刺激を受けた。

「日本のように整っていなくて、バイクしか走っていなくて、市場や屋台の雑多な雰囲気など、すべてが刺激的でした。そんな中、10区のフート競馬場のど真ん中で地元の人たちがサッカーをしているのを見つけたんです」

一言もベトナム語が話せない、ボディランゲージのみで交流を図り、とりあえず一緒にサッカーをした。
「『なんか外国人来たぞ、サッカーしにきた、あ、うまい』みたいな感じで中に入れてくれました。競馬場の真ん中なので、馬が歩いている横で18時くらいまでみんなとサッカーをして。次の日から帰国まで毎日いきました。言葉は通じないけどできるって、サッカーすごいな、と実感しました」

帰国後はとくにベトナムと関わることなく社会人生活の傍らサッカーの指導を続けていたある時、当時一緒に指導していたサッカーのコーチが白血病にかかったことを知った。さらに高校時代にお世話になったサッカー部の顧問が31歳の若さで亡くなるという悲劇が重なった。

「その時に、本当にやりたいことをやらないといけないと強く感じたんのです。明日死ぬかもしれないって。当時の僕が本当にやりたいことこそ、サッカーのコーチでした」

その後2014年にベトナムの日系サッカースクールでコーチの職を得た池山さん。2年後の2016年に独立して「スリーエーサムズアップ/3A Thumbs Up」社を設立し、日本人の子どもたち向けにサッカーとチアダンスのスクールを運営している。

「来越当時は現地の日本人の子どもたちには習い事の選択肢がとても限られていました。そんな環境だからこそ、サッカーというよりも体を動かすスポーツを楽しんでもらうために、責任感をもって教えていました」

孤児院でサッカーを教えるボランティア
継続することで信頼関係を築く

当初、池山さんが海外に出た理由は、恵まれない子どもたちにサッカーを教えたいという想いが根底にあったからだ。ホーチミン市内の孤児院でサッカーを教えているベトナム人の指導者がいると聞き、連絡を取って孤児院の子どもたちと一緒にサッカーをすることとなった。

それからしばらく経った頃、改めてその指導者に連絡すると「資金がショートして孤児院でのサッカーはやっていない」との答えが返ってきた。その時に浮かんだのは、一緒に楽しそうにサッカーをしていた子どもたちの姿だった。
「サッカーをしたくてもできない子にサッカーをさせたい! だったら自分がやらないと。自分が再開するから子どもたちを集めてほしいと頼んだんです」

2018年から月に1~2回、池山さんは孤児院の子どもたちと一緒に2時間ほどサッカーをしている。コロナ禍でサッカーができなかった間は、ハンドソープやアルコール、米などの物資を支援して関係を続けた。
「3歳から15歳くらいまでの子どもたちです。最初は彼ら一人ひとりの背景がわからなかったので、接し方を考えることが大変でした。でもサッカーをしている時はそんなことを考えずに、楽しくサッカーをしてコミュニケーションを取っていました」

もっとも嬉しかったのが孤児院の職員から「前日からイケが来るのを楽しみにしていて、サッカーをした翌日も楽しかったという会話を聞くようになった」と教えられたときだ。

「施設に来る大人に対して、子どもたちに『この人は1回きりの人間なのか、自分たちを見世物にしているのか』という視線はあると思います。だからこそ継続させていくことが、子どもたちからの信頼を得ていくことじゃないかと。子どもたちが日本語で『ありがとう』と言ってくれた時はすごく嬉しかった。やっていてよかったなと思いました」

スポーツの価値、強みを活かし
日越の子どもたちの成長の場を

日本のサッカーチームの子どもたちをベトナムに招待したとき、日越の子どもたちが成長し合う様子があったと池山さん。

「ベトナム人の子どもたちは憧れもあって、『日本人に勝ちたい』という気持ちがとても強い。技術面では日本人に及ばなくても、日本ではないようなフィジカルコンタクトをしてきます。また、面白いのが交流会です。遠慮がちな日本人に対して、ベトナム人はジュースで『モッハイバーヨー!』と乾杯を求めたりしています(笑)」

オープンマインドで接するベトナム人に、徐々に殻を破っていく日本の子どもたち。日本の子どもたちから誘って一緒に写真をとったり、片言で話したりして打ち解けていく。

「とくに日本の子どもたちは、すごく刺激を受けて成長し、自信を持って帰っていきます。『サッカーだったらヨーロッパ』と考えますが、多感な時期の子どもたちにベトナムも見せてあげたいなと思います。ベトナム人の子どもたちにとっても良い刺激になります。そこから生まれる非言語の交流こそが、スポーツの価値であり大きな強みだと思っています」

幼稚園の頃からサッカーを始め、日本の広告代理店での勤務を経て、2014年にサッカースクールのコーチとして渡越。その後独立し、20164月に「スリーエーサムズアップ/3A Thumbs Up」を設立。ホーチミン市の日本人の子どもたち向けにサッカーとチアダンスの教室を運営するほか、ベトナムの孤児院でボランティアでサッカーを教えている。

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