Japan Embassy

Header

若く熱気溢れるメタル音楽シーン
現地の人々と共に業界の発展を目指す

福田 悟司(ふくだ さとし)
ミュージシャン、
レヴァッセル/ギタリスト

福田 悟司(ふくだ さとし)

叙情溢れる美しい旋律と迫力あるボーカルで紡ぐドラマティックな楽曲。ベトナムの音楽シーンをメロディック・デスメタルで盛り上げる日本人ミュージシャンがいる。マイナーではあるがコアなファンをもつ、「レヴァッセル/RÊVASSEUR」ギタリストの福田悟司さんだ。現地の若者たちと音楽を通じた交流を続ける彼に、ベトナムの音楽シーンにかける情熱を聞いた。

ライブハウスの熱気にほだされ
各国混合デスメタルバンドを結成

「音楽活動を始めたのは高校生の頃。社会人になってからも続け、日本在住時にはドイツのレーベルからアルバムをリリースしたこともあります。ベトナムには2020年に赴任しましたが、初めての訪越だったため現地の音楽事情について何も知らない状況でした」

以前から北欧やヨーロッパ、アメリカへはライブを目的によく訪れていたという福田さん。そこでベトナムの音楽事情を知るべく、赴任後すぐに市内のライブハウスに足を運んでみた。すると、観客はさほど多くないものの、少ないなりに熱気溢れる盛り上がりがあった。そんな会場を目の当たりにし、「このシーンに入り込んで一緒に盛り上がりたい!」と、すぐにデスメタルを愛する現地のフェイスブックコミュニティでメンバーを募集。ベトナム、ニュージーランド、アメリカ、日本と多彩な顔ぶれが集うバンド「レヴァッセル」を結成した。

「コロナ隔離期間中の2021年は、自宅で録音した5曲入りのミニアルバムを制作。2022年からライブ活動を本格的に開始し、2023年7月にはフルアルバム『タリスマン/TALISMAN』をリリースしました」
活動はインターネットでのアルバムの配信のほか、ハノイ市内のライブハウスやバーでのライブも行う。観客はデスメタルに親しんだ欧米人やゴシック・ファッションに身を包んだ若いベトナム人も多い。
「スタッフの遅刻や機材トラブルによりライブのタイムテーブルが思い通りにいかない時もありますが、モンゴルやデンマーク、タイなどからもゲストバンドがやってきたりと、実はコアな盛り上がりを見せているんです」

とはいえ、結成当初の現地ではヘビーメタルなどの土壌はあるものの、メロディック・デスメタルを実際に奏でるバンドはいなかった。ひとつのジャンルとして聞いている人はいたが、本当に受け入れてもらえるか心配もあったという。

「ところが、私達がメタルバンドの活動を始めてみると、現地の人々がとても応援してくれたんです。他のライブにゲストとして呼んでもらえたり、足りない機材を提供してくれたり、バンドのグッズをメンバーの代わりに売ってくれたりもしました。おかげで今では1〜2ヶ月に1度の頻度でライブを開催できるようになりました」

20歳代の若者を中心に
音楽を愛する人々に囲まれる日々

「レヴァッセル」は現在、現地レーベル「ハウス・オブ・イグラ/House Of YGLA」に所属し活動を行っている。レーベルを運営するのは20歳代のベトナム人。他のバンドのメンバーやライブハウスのスタッフも、年長者で30歳前半ほどと誰もが若い。そのためかレーベル、ライブハウス、ミュージシャン問わず、界隈の人々の仲の良さも特徴だ。

「日本では古くからバンドをしている人が多いため、どうしても縦社会的な環境になりがち。しかし、この国のメタル関連の人々は、国籍・地域を問わず共に音楽シーンを盛り上げようと本当に熱心です。機材のセッティングを互いに手伝ったり、ホーチミン市のコミュニティと交流したり。誰もがバンドやベトナムの音楽シーンを大きくすることに力を注いでいるのには驚きました」

熱意溢れる人々に囲まれ、今では日本にはなかった心地よさを感じているという福田さん。初ライブの際は緊張もしたが、演奏が始まると多くの観客が頭を振ったりモッシュしたり。一瞬で生まれた一体感に感動を覚えた。

ベトナムで音楽プロモートに初挑戦
各国のバンドが共に奏でる未来へ

日頃ライブハウスを訪れる観客は50〜100人程度。盛り上がりはあるが、まだまだ動員数は少ない。そこで、現地の熱気に応えるべく、福田さんは自身のバンドと並行して、プロモーターとしての活動も始めた。

「ベトナムでライブをしてみたいという海外のバンドは増えてきています。ライブの主催やサポートなどの要望も多く、2023年9月にも日本からバンドを呼び、現地のバンドと共にハノイとホーチミン市でライブを開催する予定です。日本でプロモート業務をしたことはないのですが、各国の交流がより深まり互いの刺激になる、そのお手伝いができれば思っています」

ベトナムのミュージシャンは総じて若く、業界自体、今後期待できる部分も多い。そのため、企業や国が主催する音楽イベントなど、彼らの音楽を広められる機会がより多くあればとも願う。

「個人レベルの活動では、許認可等の関係から大きなイベントを開催しづらいことがあります。ジャンル的に私たちの音楽は難しい部分があるかもしれませんが、野外フェスティバルや音楽イベントに呼んでいただける機会があれば嬉しいですね」

1993年神奈川県生まれ。日系物流会社の在ベトナム駐在員としてハノイで勤務する傍ら、現地ベトナム人や在住外国人が集う混成バンドを2020年に結成。メロディック・デスメタル・バンド「レヴァッセル/RÊVASSEUR」」のギタリストとして、ハノイを中心にライブ公演を行い、ベトナムの若者に人気を博している。

 

最近更新されたインタビュー

濱田恵理子(はまだ えりこ)

濱田恵理子(はまだ えりこ)

画家

Read more >
レ・ラン・ゴック

レ・ラン・ゴック

VTV4日本語番組編集者・アナウンサー

Read more >
ごっち

ごっち

ブロガー/「ベトナムリアルガイド」運営

Read more >